妖怪をテーマとした展覧会はどのくらい増えているのか

今回は時事ネタです。
時事ネタですが、いつもの感じです。


昨年から今年にかけてなんとなく各方面で妖怪関連のイベント・展覧会が増えている印象がある。
そのような印象を受けて、では、そういう展覧会は本当に増えているのか、増えているのであればどのくらい増えているのか。ぶっちゃけ「妖怪ウォッチ」の便乗企画ばかりなんじゃないのか。などの疑問が湧く。
当ブログでは、主に自分のためと妖怪ファン向けに以前から妖怪・幽霊・怪談系の展覧会情報をまとめ・公開していた。そこで、まったく分不相応ではあるが、それらを数値化して開催数の推移をみることで近年の妖怪をテーマとした展覧会の傾向を示すことができるのではないかと考えた。

以下、随時更新しているリストをもとに、国内の博物館、美術館、文学館、記念館、資料館、歴史館等の施設で開催された企画展、常設展のうち、そのタイトルに「妖怪」を含むものを開催年別に抜き出し、妖怪をテーマとした展覧会がどのくらい増えているのかを年代順に並べてみた。煩雑になるのを避けるため、図書館、水族館で開催されたもの*1はあえて除外した。
妖怪を主要なテーマとして扱う展覧会の多くは水木しげる作品の展示を含むが、妖怪というよりも水木しげるをメインテーマとするものは★で示した。また、水木しげるのシリーズ作品である「妖怪道五十三次」をタイトルに含むもの*2は除外したが、展示内容に同作品を含んでいるかどうかは考慮していない。
展覧会の情報は箇条書きで列記し、開催年、その年の開催件数、開催施設、展覧会タイトル、会期の順に記した。


統計の方法としては、この記事末に挙げたサイト等を参考にブログ主がちまちま数えたものなので必ずしも客観的な統計データとは言えないかもしれない。でも、大略をつかむことくらいはできるのではないかと思う。あくまでファン的な統計ということをご了承いただきたい。


開催年 その年の開催件数
開催施設  展覧会タイトル 会期
記号:★=水木しげるをメインテーマとするもの、(巡回)=2館め以降の巡回展


1969年 1件
長野県信濃美術館  幽霊と妖怪画展 1969.07.01-1969.07.29


1987年 1件
兵庫県立歴史博物館  特別展「おばけ・妖怪・幽霊…」 1987.07.11-1987.08.30


1993年 3件
鳥取県立博物館  のんのんばあが案内する「水木しげると日本の妖怪」 1993.04.23-1993.05.22
(巡回)日本橋三越本店  のんのんばあが案内する「水木しげると日本の妖怪」 1993.07.20-1993.08.08
川崎市市民ミュージアム  企画展「妖怪展:現代に蘇る百鬼夜行」 1993.07.24-1993.08.29


1994年 2件
(巡回)兵庫県立近代美術館  のんのんばあが案内する「水木しげると日本の妖怪」 1994.02.05-1994.03.21
日本の鬼の交流博物館  夏休み特別企画「北欧の妖精たち=トウーラ モイラネンの妖怪画展」 1994.07.26-1994.08.21


1997年 3件
福岡市博物館  企画展示 No.114「江戸のオカルト図鑑 幽霊・妖怪図1」 1997.07.31-1997.08.31
山寺芭蕉記念館  文人の神仏・妖怪展:異界の表現史 1997.08.05-1997.08.31
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館  もののけ−描かれた妖怪たち 1997.10.07-1997.11.09


1998年 2件
福岡市博物館  企画展示 No.130「江戸のオカルト図鑑 幽霊・妖怪画2」 1998.07.14-1998.08.30
高松市美術館  水木しげると世界の妖怪展 1998.07.31-1998.09.06


1999年 1件
熊本県立美術館  夏休み子ども美術館「不思議な妖怪大集合!!」 1999.07.20-1999.09.05


2000年 4件
(巡回)福岡県立美術館  大妖怪展:心にひそむ恐れとあこがれ/異界への誘い 2000.04.29-2000.05.28
(巡回)岐阜市歴史博物館  大妖怪展:心にひそむ恐れとあこがれ/異界への誘い 2000.06.29-2000.07.30
(巡回)大丸ミュージアムKOBE  大妖怪展:心にひそむ恐れとあこがれ/異界への誘い 2000.08.03-2000.08.14
(巡回)大丸ミュージアムKYOTO  大妖怪展:心にひそむ恐れとあこがれ/異界への誘い 2000.08.17-2000.08.29


2001年 1件
国立歴史民俗博物館  企画展示「異界万華鏡 あの世・妖怪・占い」 2001.07.17-2001.09.02


2002年 4件
香川県歴史博物館  讃岐異界探訪:特別展「あの世・妖怪・占い-異界万華鏡-」 2002.04.20-2002.05.19
那珂川町馬頭広重美術館  企画展「浮世絵のお化け・妖怪展」 2002.07.05-08.04/08.08-09.08
群馬県立歴史博物館  第72回企画展「妖怪」 2002.07.20-2002.08.31
さいたま川の博物館  平成14年度特別展「水辺の妖怪:河童」 2002.07.20-2002.09.08


2003年 6件
長野市立博物館  第48回特別展「あの世・妖怪―信州異界万華鏡―」 2003.04.19-2003.06.01
高知県立歴史民俗資料館  特別展「あの世・妖怪・陰陽師―異界万華鏡・高知編」 2003.07.19-2003.08.31
河鍋暁斎記念美術館  暁斎の妖怪百物語展 2003.09.01-2003.10.25
群馬県立歴史博物館  特別展示「妖怪ぞろぞろやってきた─おばけの絵とおもちゃ─」 2003.09.04-2003.09.26
千曲川ハイウェイミュージアム  水木しげるの妖怪博物館 2003.09.12-2009.11.03
北上市立鬼の館  特別展「神々と鬼─鬼神・餓鬼・妖怪─」 2003.11.16-2003.01.12


2004年 2件
広島県立歴史民俗資料館  平成16年度開館25周年記念特別企画展「稲生物怪録と妖怪の世界―みよしの妖怪絵巻」 2004.07.20-2004.08.29
八代市立博物館 未来の森ミュージアム  平成16年度夏季特別展覧会「幽霊と妖怪の世界〜福岡市博物館所蔵旧吉川観方コレクション〜」 2004.07.23-2004.08.29


2005年 5件
国立歴史民俗博物館  新収資料の公開(テーマ別展示のうち「怪談・妖怪コレクション」) 2005.01.12-2005.02.13
小山市立博物館  第48回企画展「妖怪現る!―心の闇にひそむものたち」 2005.04.23-2005.06.12
狭山市立博物館  平成17年度夏期企画展「大妖怪展」 2005.07.09-2005.09.11
山寺芭蕉記念館  特別展「もののけ博覧会―妖怪の表現、その歴史と美術」 2005.07.26-2005.08.28
淀川資料館  第9回企画展「水辺の妖怪をたずねて 淀川の伝説と暮らし展」 2005.12.07-2006.03.27


2006年 4件
国立歴史民俗博物館  新収資料の公開(テーマ別展示のうち「描かれた怪異・妖怪」) 2006.01.11-2006.02.12
徳島県立近代美術館  部門展示「まじない・鬼・妖怪」 2006.07.11-2006.09.18
イルフ童画館  夏休み特別企画「「イルフ童画館に妖怪・おばけが大集合!」(「水木しげる展 夏だ!おばけだ!!妖怪だ!!!〜そっと闇夜をのぞいてみれば…」、「武井武雄おばけの展覧会 怖い?可愛い?面白い!」) 2006.07.14-2006.09.12
ベルナール・ビュフェ美術館  おもろいどう!こわいどう!水木しげるの妖怪道 2006.07.20-2006.09.26


2007年 5件
井上円了記念博物館  特別展「東洋大学所蔵 妖怪関係資料展−井上円了がまなざしを向けた妖怪たち−」 2007.06.02-2007.06.30
愛媛県歴史文化博物館  企画展「異界・妖怪大博覧会−「おばけ」と「あの世」の世界−」 2007.07.10-2007.09.02
勿来関文学歴史館  企画展「水木しげるの妖怪展〜歴史で感じる妖怪たち〜」 2007.07.19-2007.09.18
八戸市博物館  特別展「江戸妖怪物語」 2007.07.21-2005.08.26
浮世絵 太田記念美術館  AYAKASHI 江戸の怪し−浮世絵の妖怪・幽霊・妖術使たち− 2007.08.01-2007.08.26


2008年 11件
山口県立萩美術館・浦上記念館  浮世絵展示 妖怪絵 2008.06.24-2008.07.13
耕三寺博物館 仏教美術展示金剛館  夏休み企画「妖怪づくし…耕三寺の妖怪たち(初公開 百鬼夜行図帖)」 2008.07.05-2008.09.07
北九州市立美術館  夏のコレクション展 東洋美術コーナー〈幕末・明治の浮世絵―妖怪画と文明開化―〉 2008.07.15-2008.10.05
いわき市勿来関文学歴史館  企画展「目玉おやじが語る水木しげるの妖怪展Ⅱ〜鬼太郎からのんのんばあまで〜」 2008.07.17-2008.09.16
群馬県立歴史博物館  特別展「オバケが出たゾ〜―描かれた妖怪たち―」 2008.07.19-2008.08.31
南丹市立文化博物館  平成20年度夏季企画展「妖怪大集合!!」 2008.07.19-2008.08.31
★伝国の杜 米沢市上杉博物館  企画展「ゲゲゲの鬼太郎と、妖怪不思議ワールド」 2008.07.19-2008.09.15
名古屋市蓬左文庫 展示室1  妖怪絵本−もののけ・お化けの世界− 2008.07.24-08.29/08.30-09.28
福岡アジア美術館  NTT西日本スペシャル おいでよ!不思議の森のミュージアム 特別企画:妖怪博士 水木しげるの妖怪大冒険 2008.07.26-2008.08.17
京都府立総合資料館  資料紹介コーナー「怪 -所蔵資料にみる幽霊・妖怪・陰陽師-」 2008.08.06-2008.08.29
那珂川町馬頭広重美術館  企画展「江戸の風物 おばけ・妖怪展−今とは違う江戸のおばけ−」 2008.08.08-2008.09.15


2009年 9件
高知県立文学館  企画展「土佐のお話めぐり〜おどけ者・妖怪大集合〜」 2009.03.01-2009.04.05
兵庫県立歴史博物館  特別展「妖怪天国ニッポン−絵巻からマンガまで−」 2009.04.25-2009.06.14
井上円了記念博物館  常設展「井上円了 その人と生涯(特集展示:妖怪へのまなざし)」 2009.06.09-2009.09.26/2010.02.17-2010.05.29
広島県立歴史民俗資料館  夏の展示会「三次の妖怪ものがたり」 2009.07.03-2009.08.30
(巡回)京都国際マンガミュージアム  特別展「妖怪天国ニッポン−絵巻からマンガまで−」 2009.07.11-2009.08.31
国文学研究資料館  人間文化研究機構連携展示「百鬼夜行の世界−妖怪たちの原像と展開−」 2009.07.18-2009.08.30
北アルプス展望美術館(池田町立美術館)  ゲゲゲの鬼太郎と妖怪不思議ワールド 2009.07.19-2009.09.06
青森県立郷土館  特別展「妖怪展〜神・もののけ・祈り〜」 2009.08.23-2009.10.12
大府市歴史民俗資料館  第176回 企画展「かっぱ・てんぐ・ざしきわらし〜まんが家がイメージする遠野の妖怪と精霊」 2009.09.15-2009.11.01


2010年 9件
出雲市立平田本陣記念館  ゲゲゲの妖怪美術館〜水木しげるの愛しき妖怪達〜 2010.04.03-2010.05.16
福岡アジア美術館 7F企画ギャラリーA室  妖怪展「妖の園(あやかしのその)」 2010.04.29-2010.05.05
大阪府立国際児童文学館  資料展示「子どもの本に描かれた妖怪・ばけもの・もののけ展」 2010.07.13-2010.07.13
神栖市歴史民俗資料館  第36回企画展「わくわくドキドキ 妖怪伝説」 2010.07.24-2010.08.31
兵庫県立美術館 芸術の館  特別展「水木しげる・妖怪図鑑」 2010.07.31-2010.10.03
日本の鬼の交流博物館  夏季特別展「妖怪画の中の鬼」 2010.08.02-2010.08.31
平木浮世絵美術館 UKIYO-e TOKYO  納涼 妖怪・化け猫 2010.08.03-2010.08.29
河鍋暁斎記念美術館  企画展「暁斎一門の描く妖しき世界―幽霊図・妖怪画―」 2010.09.01-2010.10.25
焼津小泉八雲記念館  第7回小企画展示会「小泉八雲の妖怪奇談」 2010.10.01-2010.12.26


2011年 10件
新潟県立歴史博物館  春季企画展「博物館の怪談―新潟の妖怪と妖怪博士・井上円了―」 2011.04.23-2011.06.05
広島県立歴史民俗資料館  夏の展示会「三次の妖怪ものがたり」 2011.06.24-2011.09.04
藤枝市郷土博物館・文学館  企画展「東海道の怪談と妖怪」 2011.07.03-2011.08.31
菱川師宣記念館  企画展「奇怪・妖怪ものがたり−世にも不思議な別世界へようこそ−」 2011.07.05-2011.09.19
城陽市歴史民俗資料館  平成23年度夏季特別展「あの世・妖怪-闇にひそむものたち-」 2011.07.09-2011.09.04
東京国立博物館  親と子のギャラリー「博物館できもだめし─妖怪、化け物 大集合─」 2011.07.20-2011.08.28
最上徳内記念館  企画展「妖怪と幽霊図展」 2011.07.29-2011.08.30
国立歴史民俗博物館  第3展示室(近世)特集展示 「もの」からみる近世「妖怪変化の時空」 2011.08.02-2011.09.04
那珂川町馬頭広重美術館  企画展「よみがえる江戸のお化け・妖怪」 2011.08.05-2011.09.11
茨城県立歴史館  特別展「妖怪見聞」 2011.10.15-2011.11.27


2012年 12件
練馬区石神井公園ふるさと文化館  特別展「江戸の妖怪展」 2012.01.21-2012.03.04
北上市立鬼の館  特別展 収蔵資料展「妖怪〜古今東西〜」 2012.04.21-2012.07.22
福岡市博物館  特別企画展「幽霊・妖怪画大全集」 2012.06.30-2012.09.02
河鍋暁斎記念美術館  企画展「幽霊図・妖怪画〜異形のものたち〜」 2012.07.01-2012.08.25
山寺芭蕉記念館  企画展「妖怪と文学・美術」 2012.07.05-2012.08.20
芦屋歴史の里  特別展「妖怪展」 2012.07.18-2012.09.30
松浦史料博物館  夏季企画展「殿様と不思議な世界 〜平戸藩松浦静山と妖怪・奇談・風習〜」 2012.07.20-2012.08.31
八代市立博物館 未来の森ミュージアム  松井文庫常設展示 夏休み特別企画「描かれた妖怪たち 博物館で妖怪を探そう!」 2012.07.24-2012.09.09
最上徳内記念館  企画展「江戸時代の妖怪展」 2012.07.27-2012.08.28
川崎市市民ミュージアム  夏休みこどもマンスリー「妖怪大集合!」 2012.07.28-2012.08.31
文化のみち橦木館  「もののけづくし」妖怪図像あれこれ展 2012.08.04-2012.08.08
浮世絵 太田記念美術館  楊洲周延「東錦昼夜競」―歴史・伝説・妖怪譚 2012.12.01-2012.12.20


2013年 13件
高知市春野郷土資料館  コーナー展示「道具の妖怪〜道具も年を経れば妖怪に〜」 2013.01.11-2013.02.24
(巡回)大阪歴史博物館  特別展「幽霊・妖怪画大全集」 2013.04.20-2012.06.09
広島県立歴史民俗資料館  夏の特別企画展「真夏の妖怪大行進!」 2013.07.01-2013.09.01
三井記念美術館  特別展「大妖怪展‐鬼と妖怪そしてゲゲゲ‐」 2013.07.06-2013.09.01
みやざき歴史文化館  企画展「幽霊・妖怪大集合」(夏の特別展「お化け・妖怪展」) 2013.07.06-2013.09.01
山寺芭蕉記念館  常設展テーマ展示「妖怪と文学・美術」 2013.07.11-2013.08.27
横須賀美術館  企画展「日本の「妖怪」を追え! 北斎国芳、芋銭、水木しげるから現代アートまで」 2013.07.13-2013.09.01
丹波市立植野記念美術館  特別展「夏の粋 納涼浮世絵展〜夕涼み 美人に 花火に 妖怪画〜」 2013.07.13-2013.09.16
水戸市立博物館  企画展 夏休み子どもミュージアム「妖怪さまのお通りだい!−夏の夜はつくも神が大さわぎ−」 2013.07.23-2013.08.31
(巡回)そごう美術館  福岡市博物館所蔵 幽霊・妖怪画大全集 2013.07.27-2013.09.01
神戸市立須磨海浜水族園  企画展「奇奇怪怪!水辺の妖怪」 2013.08.10-2013.09.01
八代市立博物館 未来の森ミュージアム  松井文庫Ⅱ「描かれた妖怪たち」 2013.09.03-2013.10.20
国立公文書館  連続企画展 第5回「妖怪退治伝」 2013.12.18-2014.02.01


2014年(※8月現在) 18件
河鍋暁斎記念美術館  企画展「妖怪図−奇々怪々あやしの世界−展 」 2014.05.02-2014.06.25
(巡回)名古屋市博物館  特別展「福岡市博物館所蔵 幽霊・妖怪画大全集」 2014.05.21-2014.07.13
石川近代文学館  春の企画展「妖怪えほん原画展」 2014.04.19-2014.08.24
耕三寺博物館 仏教美術展示金剛館  夏季企画展「百鬼夜行の世界」 2014.05.31-2014.08.31
浮世絵 太田記念美術館  特別展「江戸妖怪大図鑑」 2014.07.01-2014.09.25(第1部:07.01-07.27/第2部:08.01-08.26/第3部:08.30-09.25)
高井鴻山記念館  夏季展「鴻山の妖怪たち―異界に遊ぶ―」 2014.07.04-2014.09.24
勿来関文学歴史館  企画展「妖怪展」 2014.07.17-2014.09.16
山寺芭蕉記念館  企画展「妖怪の文学・美術」  2014.07.18-2014.08.25
五島観光歴史資料館  企画展 「お化け・妖怪大集合!〜資料館のお化け屋敷〜」 2014.07.19-2014.08.31
(巡回)山梨県立博物館  企画展「福岡市博物館所蔵 幽霊・妖怪画大全集」 2014.07.19-2014.09.08
高浜市やきものの里かわら美術館  特別展 「鬼と妖怪の造形(かたち)−水木しげるの作品とともに−」 2014.07.19-2014.09.15
秋田市立佐竹史料館  企画展「江戸時代の幽霊と妖怪」 2014.07.20-2014.11.30
臼杵市歴史資料館  ミニ企画「うすき妖怪図会」 2014.07.23-2014.09.08
八代市立博物館未来の森ミュージアム 松浜軒/松井文庫  企画展「夏の風物詩〜妖怪絵巻・朝顔生写図」 2014.07.25-2014.09.30
徳島市立木工会館  怖い話で涼を感じて〜江戸時代の幽霊・妖怪展 2014.07.31-2014.08.17
茨城県陶芸美術館  親子でみるコレクション展「やきもの妖怪、参上!」 2014.08.01-2014.08.31
山口県立萩美術館・浦上記念館  普通展示 妖怪絵 2014.08.05-2014.09.07
能登川博物館レンタルギャラリー  八日市は妖怪地-東近江のガオさんと妖怪たち- 2014.08.06-2014.08.17



以上、各年の開催数を足すと計120件、うち14件が水木しげるをメインに取り上げるものだった。
上のデータをグラフに示すと以下のようになる。


▲タイトルに「妖怪」を含む展覧会の開催件数の推移(1990〜2014年8月)

2000年代後半以降とくに増加している傾向が見て取れるが、2014年の18件は前年の2013年の13件と比べても急増している。
今回はあくまでタイトルに「妖怪」の文字列を含むものを数えただけであるので、内容的に妖怪をテーマとした展覧会の数は実際とは異なってくるが、それを踏まえても今年の開催件数はそれ以前と比べて突出していると言ってよいだろう*3


ここで簡単に全体の傾向をまとめてみる。
従来の展覧会では妖怪が通俗的な要素を多分に含むこともあり、それがあまり積極的に取り上げられることはなかったが、1987年に兵庫県立歴史博物館で開催された特別展「おばけ・妖怪・幽霊…」を皮切りに、1990年代以降は妖怪をテーマとした展覧会がたびたび開催されるようになった。
多くの展覧会が夏季(7月〜9月頃)に開催されており、熊本県立美術館 夏休み子ども美術館「不思議な妖怪大集合!!」(1999年)や東京国立博物館 親と子のギャラリー「博物館できもだめし─妖怪、化け物 大集合─」(2011年)など、子ども向けを意識した企画も少なくない。
今年になって妖怪関連の展覧会がとくに多いのは「妖怪ウォッチ」ブームの影響であるとも取れるが、一方で、河鍋暁斎記念美術館や耕三寺博物館、山寺芭蕉記念館、八代市立博物館未来の森ミュージアム、高井鴻山記念館など定期的にコレクションから妖怪画をピックアップしてきた例や、臼杵市歴史資料館や能登川博物館のように地域の活動と連動しているものもあり、一概には言えない。また、日本の鬼の交流博物館や北上市立鬼の館は、館そのもののコンセプトを「鬼」に絞り継続してさまざまな活動を行っている。


とりあえずの結論。
しばしばささやかれるように、2014年の妖怪を主要なテーマとして扱う展覧会の急増が「妖怪ウォッチ」の流行を受けていることは充分に考えられ、実際のところそういう面あるのだろう。しかし、妖怪をテーマとした展覧会自体は90年代以降には各地で開催されており、多少の増減はあるが概ね増加傾向にあった。そのような流れのもと、昨年来の「妖怪ウォッチ」のメディアミックス展開及びその爆発的流行に刺激された結果が2014年における開催数の急増なのではないかと推測される(*補足。実際、「妖怪ウォッチ」のゲーム第1作の発売が2013年7月、マンガ版の連載開始が『コロコロコミック』2013年1月号から、アニメの放送開始が2014年1月から。2014年の開催件数が突出しているとはいえ、展覧会の準備期間を考慮しても、その理由は「妖怪ウォッチ」だけに求められるものではないだろうと思う)。


なんだか無難なところに落ち着いてしまったが、「妖怪ウォッチ」の流行も事前に「妖怪」という言葉と考え方が世間に定着していた土壌があったからこそであるとも言え、展覧会はそのような土壌をつくる役割を担っていたもののひとつだろう。各地の博物館や美術館が展覧会で妖怪を取り上げるようになったことは、人々の妖怪への興味や知識を増進させるものであっただろうし、各メディアが妖怪という題材を一般へ発信していく傾向は美術館・博物館の活動とも無縁ではない。
そのように考えていくと、2000年代以降の妖怪ブームの諸相みたいなものが描けそうな気がしてくるが、文章が冗長になってきたので今回はここらへんで了。



追記:データと数値を訂正しました。2014年の項目で展覧会タイトルに「妖怪」を含まないものをカウントしていたのを削除、数値を訂正。×「2014年 21件」→○「2014年 18件」それにともなって、総計も「123件」から「120件」に訂正。(2014/08/29)


なお、この記事の作成には主に以下のサイト等を参考にしました。

 Art Libraries' Consortium | 美術図書館横断検索 http://alc.opac.jp/

 art commons@nact展覧会情報検索@国立新美術館 http://ac.nact.jp/

 日本の美術展覧会記録1945-2005 - 国立新美術館 http://db.nact.jp/exhibitions1945-2005/

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 水木プロダクション公式サイトげげげ通信 www.mizukipro.com

*1:例えば、国立国会図書館 第96回常設展示「「妖怪画談」−妖怪のイラスト・妖怪学・怪談−」(1999年)、早稲田大学総合学術情報センター 図書館企画展示「異形のものたち〜妖怪とお化けの世界」(2003年)、豊橋市中央図書館 企画展「三遠南信地域資料展 ふるさとの妖怪をたずねて」(2014年)、世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ 特別企画展示「ふしぎな水ゾクッ館〜妖怪たちに出会う夏〜」(2013年)などがある。

*2:例えば、東京都江戸東京博物館 特別展「水木しげる妖怪道五十三次―妖怪と遊ぼう展―」(2004年)、奥田元宋・小由女美術館 水木しげるの妖怪道五十三次展(2006年)、豊橋市二川宿本陣資料館 水木しげるの妖怪道五十三次展(2007年)、丹波市立植野記念美術館 特別展「水木しげるの妖怪道五十三次展 〜番外編 広重の「丹波 鐘坂」と兵庫の妖怪たち〜」(2010年)、島田市博物館 特別展 島田市博物館開館20周年記念「鬼太郎と行く妖怪道五十三次展〜ふるさと妖怪図鑑〜」(2012年)など多数。

*3:補足。最大値の2014年を別にすれば、2008年の開催件数11件が2007年の5件と比べて著しく増加している。