東京ラピュタ構想 実現しなかったバブル期の都市計画

たまの更新。

東京ラピュタ構想について書く。



日本テレビ金曜ロードSHOW!」の2013年8月2日「天空の城ラピュタ」地上波放送時に、Twitterの「バルス」ツイートで秒間ツイート数(TPS)が143,199TPSで世界記録を更新したそうな。すごいですね。


バルス ばるす (アニメ)

アニメ『天空の城ラピュタ』に出てくる滅びの呪文。

ラピュタ語で「閉じよ」の意味。転じて、何かが壊れた(何かを壊した)とき、ネタで使う場合もある。

本編開始から1時間55分5秒後、ムスカの「3分間待ってやる!」の65秒後に宣言される。


バルスとは - はてなキーワード http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%EB%A5%B9


映画「天空の城ラピュタ」は、主人公の少年が父の遺志を受け継いで伝説のラピュタの実在を証明するという夢を実現させる物語なわけだが、かつてバブル期の日本で計画された実現されなかった「ラピュタがある。


それが「東京ラピュタ構想」だ。


今回はその実現されなかったほうのラピュタの話をする。


東京ラピュタ構想は、東京の地上31mの高さに人工的に1,000m×1,000mの地表面を作り、土地を2階建てにするという構想だ(設定されている高さが31mなのは、建築基準法の高さ制限の目安による)。

2階建ての地表面を緑地で覆い、住宅は全て集合住宅で10層の高層住宅群と56棟の中低層住宅からなるという。

この構想は、早稲田大学理工学部の尾島俊雄教授(当時)の監修の下、大林組によって提案された。

付け加えておくと、東京ラピュタ構想の「ラピュタ」はジョナサン・スウィフトの「ガリヴァ―旅行記」に出てくるラピュタであって映画のほうを想定しているわけではない。



以下の動画の27:16〜あたりと30:40〜あたりに解説されている。


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この東京ラピュタ構想について、建設機械編集委員会 編『建築機械』26巻1号掲載の永瀬一郎「東京「ラピュタ」構想」には以下のように書かれている。


〔前略〕「ラピュタ」は既存の大地の上空に浮かぶもうひとつの大地に立つ理想の都市である。そんな空中の街を超過密都市・東京の上空に浮かべることができたら。
 この壮大な夢を、現代の建設技術によって実現するとどんな姿になるだろうか。我々は、ガリヴァの舞台を近未来におきかえ、過密に悩む東京の上空に「ラピュタ」のイメージを重ね合わせてみた。*1


ここで語られているように、東京ラピュタ構想はそもそも理想論的なふうがあり、技術的な面さえクリアすればこういう都市計画もありうるかもしれない程度のものだったことがここの文面からは感じられる。


しかし、技術面さえクリアすれば十分実現可能であると考えられていたあたりがバブル的なところで、東京都が抱える「業務機能の集積による過密化」と「定住人口の減少による過疎化」という二大問題を解決する大型都市再開発手法としてわりと真面目に提案されている。


ここで構想されている2階建て地表面をどう利用するかということの概要を書くと、上部は居住施設およびその関連施設と学校、緑地など、下部は6層のオフィスを基本にそのほかの商業施設、駐車場、都市ユーオティリティ施設などに利用。既存の歴史的建造物はそのまま保存される方針だった。


さらに、光・風・水・緑の4つのモチーフをイメージし、風の塔のある中央広場を中心に、東西方向の光のガレリア、南北方向の緑の切通しの2本の道路によって、それぞれのモチーフに対応する4つのゾーンを構成。屋外には古代ローマ風の水道橋、ガラスのピラミッド、野外円形劇場などが並ぶ。パねぇ。


交通機関は、緊急車や維持管理用の作業車以外の一般車両は想定せず、地表面は歩行者と自転車だけのスペースで、移動はエレベーターか地下鉄によるネットワークによる接続を提案。構造は100m間隔のコンクリート柱により地上31mの高さにコンクリート製の構造体を建設し、盛り土をして諸施設を設置する方式が採用されているが、工法の詳細については検討課題とされている。



東京ラピュタ構想は1980年代に計画されていたさまざまな予算や既存の法律制度を度外視した都市計画のひとつで、これ以外にも今考えるとありえないだろというものがたくさんあったようだ。


まあ、このあとバブルが崩壊して実現しなかったわけだが。


あと、関係ないけどこういう予算度外視の大型都市計画って今の少年マンガとかにたまに出てくるマンモス学園都市に似てるなあなどと記事を書いてて思った。バブル期の都市計画とフィクションにおける架空マンモス学園とに関係があるのかどうかという問題は考えるてみると面白いかもしれない。要検討。



っていうか久しぶりの更新記事がこれかよ。妖怪関係ないな。

*1:永瀬一郎「東京「ラピュタ」構想」(建設機械編集委員会 編『建築機械』(明日を担う大型構想<特集>)26(1)、1990年1月、64頁