妖怪

“只だ化け物が面白い”――伊東忠太「化けもの」(1925年)

建築家の伊東忠太(1867‐1954)が妖怪について書いたまとまった文章に「妖怪研究」があり、青空文庫でも読める*1。 で、この「妖怪研究」とは別に、伊東忠太には「化けもの」という随筆があるのだが、こちらは『伊東忠太建築文献』*2に収録されたものが国立…

円本「世界妖怪全集」のウワサ

以前にTwitterでつぶやいて私的にまとめて、その後新規の情報も見つからず下書きしたまま半ば忘れて放置していた話を、備忘のためのメモとして以下に記事にしてみる。 こちらのサイトに、「高井有一の小説『夢の碑』では、新生美術社(中央美術社)が円本と…

【妖怪メモ】石川県の郷土誌に見られる妖怪まとめ(3)

前回の続き(たぶん今回で最終回)。 今回はとくにざっと調べただけではよくわからなかったもの、説明のつけ難かったものを中心に並べているので解説は本当に思いつきのメモ程度。 前々回⇒"【妖怪メモ】石川県の郷土誌に見られる妖怪まとめ(1)" 前回⇒"【妖怪…

【妖怪メモ】石川県の郷土誌に見られる妖怪まとめ(2)

前回の続き。 前回⇒"【妖怪メモ】石川県の郷土誌に見られる妖怪まとめ(1)"※地域欄の自治体名は2015年現在の表記と区分を採用しているが個人で確認できた範囲なので正確性について疑問符の付くものもあるかもしれない。 ※掲載順は引用文献の発行年、ついで頁…

【妖怪メモ】石川県の郷土誌に見られる妖怪まとめ(1)

とりあえず、石川県の郷土誌に見られる妖怪話で、目についたもの、面白そうなもののうち、一般的な妖怪事典・妖怪図鑑やネット検索にあまり引っかからないものを中心にをざっくりと抜き書きしたいくつかを順次ここに上げていこうと思う。深く掘り下げたり、…

宮武外骨編『骨董雑誌』にみる怪異妖怪記事

図書館で『骨董雑誌』をめくっていたら妖怪的に面白そうな記事がけっこうあったのでまとめてみることにした。ざっくりまとめただけで抜けや勘違いがあるかもしれないので、随時訂正するかも。 『骨董雑誌』は宮武外骨が編集発行をしたいくつかの雑誌のひとつ…

今尾景年は妖怪画を描かない。――『名家歴訪録』(1901年)

忘れそうなので書いておく。 黒田譲『名家歴訪録』(1901年)の「今尾景年氏」の章で、明治29年12月23日、黒田譲(天外)に今尾景年本人が自己の経歴をインタビュー形式で語った下りで以下のようにある。 ……それで私も幼年の時から、絵が大好で厶いまして、十…

新渡戸稲造の教育的妖怪論――「妖怪改良の説」(1906年)

Twitterにちょろっと連投したツイートの再編集版まとめ記事です。 新渡戸稲造に、「妖怪改良の説」という3ページばかりの文章がある*1。明治39年(1906)に雑誌『さをしか』に発表された。 書き出しこそ、「妖怪の談は何れの国にも伝はつて居るが、その国民の…

【妖怪メモ】蛇蓮

備忘録的に。 『石川県河北郡誌』(1920年)に次のようにある。 蛇蓮。 現今小坂村字千田に属する天王の森の北方に坊地と称する所あり。是れ即ち往昔三光寺と称へられたる光徳寺・光琳寺・光専寺の旧跡にて、其の付近に狐山と称する所あり。其地に大蛇ありしに…

妖怪をテーマとした展覧会はどのくらい増えているのか

今回は時事ネタです。 時事ネタですが、いつもの感じです。 昨年から今年にかけてなんとなく各方面で妖怪関連のイベント・展覧会が増えている印象がある。 そのような印象を受けて、では、そういう展覧会は本当に増えているのか、増えているのであればどのく…

【妖怪メモ】鬼は日本に漂流してきた西洋人という俗説(1)

また、わが四国、九州地方には南洋インド諸島より漂泊して、深く山間に潜み、果実を食いて生活せし人種なしというべからず。もし人、偶然かかる異人種を発見することあらんには、また必ず怪物と見なすべし。 ◆井上円了『妖怪学講義』「第二 理学部門 第五講 …

【妖怪メモ】七つ娘

『米子の妖怪』(立花書院、2005年)に、次のようにある。 七つ娘 現在の米川橋ですなあ、あすこのとこに反対のところへ行くと中島の方へ行く土手をねえ、こっちに下がって来たとこに中島の方へ行く近道がある。避病院があってね、そこのところに近道があっ…

明治時代の幻の妖怪研究?−−今泉秀太郎「お化の話」(『一瓢雑話』より)

今年はなるべくブログを更新したい。というわけで、昨年にTwitterで少し言及してそのままになっていた小ネタ。 今泉秀太郎『一瓢雑話』(1901年)に「お化の話」というエッセイがある。>近代デジタルライブラリー - 一瓢雑話 http://kindai.ndl.go.jp/info:nd…

備忘録

備忘のためにメモ。 〔・・・前略・・・〕ここで重要なのは、幽霊に女が多いという場合、実際に出現したという「事柄の叙述」ではなく、絵画や歌舞伎の舞台などの「目に見える姿」に限定された問題だという点である。従って、このような問いを改める必要があ…

【暫定】辞書に見えたる「妖怪」――各種国語辞典における「妖怪」の用例とそれ以外

■各種国語辞典等の「妖怪」の定義 ――辞書に見えたる「妖怪」。 吉川観方の有名な著書*1にあやかって大仰な見出しをつけてしまったけども、要はすでに言及されていることの事実確認だ。 何か珍しい妖怪の報告でもなければ、ネットでもたびたび話題になる「妖…

妖怪系展覧会カタログリスト

以下は、主要な妖怪系展覧会に際して刊行された展覧会カタログの私的なリストである。 以前から更新している展覧会リストを元に作成している。 主に展覧会タイトルに妖怪・怪異・怪談系のワード(妖怪、おばけ、化け物、怪異、怪談、幽霊、モノノケ、魑魅魍…

「俘虜妖怪ニ恐ル」『明治37・8年 松山水曜会記事』

俘虜妖怪ニ恐ル 小笠原通訳 大林寺収容所ノ二号室ノ天井板風モナキ折ソート奪ハレタルニ俘虜ハ之ヲ不審ガリ薄気味悪ク思ヒ居タリ自分ハ其元ヘ首ヲ入レテ中ヲ窺ヒ見タルモ何分薄闇キ為メ様子ハ更々分カラス元ノ如ク直シ置キタルニ其翌朝又一枚奪ハレ居ル故俘…

伊東忠太「幽霊」(「今昔小話」より)

Twitterなど見てると世にはさまざまなジャンル・レベルで妖怪に関心のある人々がいるものだなあとあらためて思ったりする。 妖怪好き界隈においては妖怪建築家として知られる伊東忠太(1867‐1954)には「妖怪研究」という文章があり、青空文庫でも読める。 …

土屋秀禾「妖怪絵巻」『絵画叢誌』第331号(大正4年3月)

しばらく展覧会一覧の追加以外更新してなかった。お久しぶりです。 卒論関係で『絵画叢誌』を読んでたら面白い記事を見つけたんだけども、論文では使いどころがなかったのでここで紹介してみる。画家が泊まった家で妖怪に遭遇してその絵巻を描いたよという話…

近年の妖怪系展覧会リスト(仮)

ブログがいつまでも更新されないというのもアレなので何か書こうと思う。 2012年の夏は妖怪をテーマにした展覧会が多数開催された。 福岡市博物館の「幽霊・妖怪画大全集」(会期:6月30日〜9月2日)然り、河鍋暁斎記念美術館の「幽霊図・妖怪画〜異形のもの…